金相場の高騰はいつまで続く?直近10年間の推移から今後の見通しを徹底解説!
ここ数年の金相場の高騰ぶりは、これまでの常識をはるかに超えるものです。
一体なぜ、これほどまでに金相場は上昇し続けているのでしょうか。
そして、この勢いはいつまで続くのでしょうか。
今回は、金相場の高騰はいつまで続く・直近10年間の推移から今後の見通しについて徹底解説します。
本記事を読むことで、金相場の現在、金相場が影響を受けている要因、直近10年間の推移、今後の見通しなどをどこよりもわかりやすく解説します。
1. 金相場の現在(歴史的な高騰が継続中)
これまで金は、資産形成の一つの手段として活用されてきました。
しかし近年はその価値が飛躍的に高まったことで、過去に例を見ないほどの高騰を続けています。
実際、現在の金相場は適正価格なのでしょうか。
こちらでは金相場の現在について詳しくご紹介します。
1-1. 現在の金相場はいくらか?
2025年8月12日時点の日本の金相場は、金1グラムあたり17,663円です。
ちょうど1年前の2024年8月12日の金相場は、金1グラムあたり12,566円、10年前の2015年8月12日は4,864円でした。
1年前と比較すると5,097円、10年前と比較すると12,799円も金相場は上昇しているということがいえます。
このデータは、金相場が現在まで長期にわたって右肩上がりの上昇トレンドにあることを明確に示しています。
1-2. 金相場は過去10年間で約3.6倍の上昇
現在の金相場の上昇は、単なる一過性のトレンドではありません。
過去10年間で、金相場は実に約3.6倍も上昇しているからです。
この数字は、金が資産としての価値を高めてきたことを十分物語っています。
特に直近1年間だけでも、価格は約30%近くも上昇しており、金投資への勢いが加速していることがわかります。
この長期的な上昇トレンドは、金相場の未来を考える上で極めて重要な意味を持っているのではないでしょうか。
1-3. 現在の金相場は適正か?
現在の金相場は、過去のデータを参考にすると、明らかに高値の水準にあります。
この歴史的な高騰の原因については、多くの専門家や投資家の間で意見が分かれている状況です。
では、現在の金相場は適正なのでしょうか。
「適正価格」という観点から見ると、現在の金相場は必ずしも高値とは言い切れません。
その理由は、金相場はマーケットの需要と供給のバランスが価格を構成しているからです。
金相場の価格は単一的な要因では決まりません。
いくつかの要因が作用し合い、需要と供給のバランスを形成しています。
その結果として、資産の価値を守るために「実物資産」である金へと多くの資金が流れていると考えられます。
これらの構造的な要因が、現在の金相場を支えているのです。
2. 金相場は主に何の影響を受ける?
金相場は、単一の要因で決まるわけではなく、いくつかの要因が作用し合い、相場が形成されます。
そのため初心者には若干複雑に感じるかもしれません。
ただし基本となる要因を把握することで、意外に簡単に予想することができます。
金相場の特徴は「リスクが発生した時の避難先」ということです。
ポイントは世の中のリスクが高くなると金の需要が高まり、逆に安定期が続くと需要が低下するということです。
その点がつかめれば、初心者でも金相場がこれから上昇するか、下落するかをある程度予想することができます。
こちらでは金相場を動かす主な要因についてわかりやすくご紹介します。
2-1. 経済の動き
金は経済の動きによって影響を受ける資産です。
そのため金相場は経済の動きに非常に敏感です。
経済が安定している時には売られ、経済が不安定化すると買われます。
次の場合ではどちらも買われるケースです。
- インフレ(物価上昇)になると、お金の価値が下がるため価値を保つために金を買う人が増えます。
- 逆にデフレ(物価下落)になると、物価が下がり、お金の価値は上がりますが、経済が停滞期に入るので、「安全資産」として金を買う人が増えます。
2-2. 金融市場の動き
金は金融市場の動きによって影響を受ける資産です。
金は株式市場が安定している時や上昇している時には売られます。
逆に 株式市場が大きく下がったり、銀行などの金融機関が破綻したり、魅力的な金融商品が市場にないと、「安全な逃避先」として金は買われます。
有名な例では、2008年のリーマン・ショック時には金の需要が大きく増えました。
2-3. 中央銀行の金利の動き
金は中央銀行の金利の動きによって影響を受ける資産です。
中央銀行は、自国の経済の状況によって金利を上げたり下げたりしてお金の流れを調整している組織です。
中央銀行が金利を上げると、債券や預金などの利子を生む資産の魅力が増すことから、利子を生まない金は魅力を失い売られます。
逆に金利が下がると、債券や預金などの魅力が下がるので金は買われます。
2-4. 地政学的リスク
金は地政学的リスクによって影響を受ける資産です。
地政学的リスクとは、ある地域の政治や軍事的な不安定さが、世界経済や市場に悪影響を及ぼす可能性のことです。
簡単に言えば、国と国、ある地域間の関係が悪くなることで、お金の流れも悪くなるかもしれないという思惑のことになります。
具体的には戦争や武力衝突、政情不安やクーデター、テロなどです。
そのため地政学的リスクが発生すると金は「有事の安全資産」という魅力を発揮して買われます。
2-5. 米ドルの価値
金は米ドルの価値によって影響を受ける資産です。
米ドルの価値を簡単に言うと「米国はドル高になると、他国の商品をたくさん買え、ドル安になると買えるものが減る」ということです。
アメリカの経済が好調だと、アメリカの中央銀行(FRB)が金利を上げるので、投資家がドルを買いドル高になります。
日本に住む人にとってドル高になると、日本は相対的に円安になるので、円安で金が高く感じられ金を買う人は減ります。
ただし、急激な円安が進むと、日本円の価値が下がることを懸念して「価値の保存手段先」として金を買う人が増えることもあります。
2-6. 中央銀行の金の購入
金は中央銀行の金の購入によって影響を受ける資産です。
中央銀行は、その国の「お金の管理」をする機関であり、通貨を発行したり、お金の量や価値を管理して、経済が安定するように調整しています。
中央銀行が金を買う理由は、自国の経済を守るためです。
自国の経済が不安定になると、中央銀行は国際的に信用があり、下落リスクに強く、国際的な支払いや準備金の役割を果たせる金を購入して自国の経済の安全性を高めます。
ちなみに2022年から2024年にかけて、各国中央銀行は3年連続で1000トンの大量の金を購入し、その量は年間採掘量の3割近くです。
そのため市場には最初から年間採掘量の2/3ほどしか出回っていない状況です。
中央銀行が金を購入すると、市場から金が少なくなることや自国の経済への不安が高まり需要が増え金が買われます。
2-7. 金の供給量
金は供給量によって影響を受ける資産です。
金の埋蔵量は無限ではありません。
2025年時点での金の総量は約25万トンといわれ、過去に採掘されたのは約20万トン、まだ採掘されてないものは5万トンです。
金の年間採掘量は約3,000トン、リサイクル金は年間約250〜900トン程度です。
仮に年間3000トン採掘され続けると、あと約16年ほどで金は枯渇する計算です。
金は供給量が減ると、需要が高くなり、価格が上がることから買う人が増えます。
2-8. 金の需要
金は需要によって影響を受ける資産です。
金にはさまざまな需要があります。
内訳は次の通りです。
| 宝飾品 | 34% |
| 投資 | 42% |
| 電子機器の部品など | 7% |
| 中央銀行などの保有 | 17% |
これらの金の需要が高まれば、価格が上がることから、金を買う人が増えます。
2-9. 通貨の量的緩和
金は通貨の量的緩和によって影響を受ける資産です。
量的緩和とは、中央銀行がお金をたくさん市場に出す政策です。
お金がたくさん市場に流れると、お金の価値が下がり、物の価値が上がるインフレが起きる可能性があります。
お金の価値が下がると価値が安定している金を買う人が増えます。
2-10. 投機的な動き
金は投機的な動きによって影響を受ける資産です。
投機とは、価格の変動を利用して短期的に利益を得ようとする投資行動のことです。
具体的には金の先物取引、金ETF(上場投資信託)、金CFD(差金決済取引)、金のオプション取引、金関連株への投資、実物の金の短期売買などがあります。
金が投機的な動きによって影響を受ける理由は、金の先物や金ETFに投機マネーが流れ、価格が短期間で高騰すると、それを見たたくさんの投資家が一気に金を買ったりするからです。
このような投機的な動きは、金相場に大きなボラティリティ(価格変動性)をもたらします。
そのため投機筋が一度に大量の「買い」を入れると価格は急騰します。
逆に、何らかのきっかけで「売り」に転じると、今度は急落を引き起こす可能性があるので注意が必要です。
2-11. 季節的な需要増加
金は季節的な需要増加によって影響を受ける資産です。
金の季節的な需要増加とは、特定の時期や季節に、金を買いたい人や使う人が増えることです。
これは主に文化や習慣、経済の動きに関係しています。
金は投資だけでなく、ジュエリーや贈り物としても使われるので、特定の時期に需要が一気に増えることがあります。
具体的にはインドや中国など、人口が多い国での結婚シーズン、ギフトシーズン、お祭りシーズンなどです。
これらのシーズンになると、金の需要が一気に増え、購入する人が増えるので、金の価格が上がります。
ちなみにインドと中国は世界の金の需要の50%以上(ジュエリーや投資)を占めるので、これらの国の季節的な需要増加は、グローバルな金の価格に強く影響を及ぼします。
3. 直近10年間の金相場の推移
金相場の未来を予測するためには、過去10年間の変動を詳細に理解することが不可欠です。
「金は安全資産」という言葉を裏付けるように、この10年間で金相場は着実にその価値を高めてきました。
特に、直近数年の高騰ぶりは目覚ましく、多くの投資家が金相場に注目しています。
こちらでは直近10年の金相場の推移についてご紹介します。
3-1. 直近10年の金相場の推移
| 年 | 最高値(円/グラム) | 2015年との価格差 |
| 2025 | 17,875 | +12890 |
| 2024 | 13,784 | +8977 |
| 2023 | 9,935 | +4950 |
| 2022 | 8,154 | +3169 |
| 2021 | 6,897 | +1912 |
| 2020 | 7,063 | +2078 |
| 2019 | 5,343 | +358 |
| 2018 | 4,827 | -158 |
| 2017 | 4,751 | -234 |
| 2016 | 4,655 | -330 |
| 2015 | 4,985 | 0 |
4. 近年の金の高騰の背景は?
こちらでは、前章で解説した「金相場は何に影響を受けるのか」を受けて、近年の高騰の背景は何かについて解説します。
近年の金相場の高騰の主な原因は、各国の中央銀行が金の保有量を増やしているからです。
1990年代から2000年代にかけて、欧米の中央銀行は金の保有量を減らし、金を売却する傾向にありました。
理由は金本位制が終わり、金は通貨の裏付けとしての役割を失い、中央銀行にとって戦略的資産としての重要性が低下したと見なされていたからです。
かいぎょう
ところが2008年の世界金融危機をきっかけに、中央銀行は再び金を「安全資産」として見直し始めます。
それにより2024年まで15年連続で中央銀行による金の購入が続いています。
現在積極的に金を買っているのは新興国を中心としたポーランド、中国、インド、トルコなどです。
ちなみに世界の中央銀行・公的機関の金保有量のトップ3は次の通りです。
4-1. 国・公的機関別金保有量のトップ3
| 順位 | 国名 | 金の保有量(トン) |
| 1位 | アメリカ | 8133.46 |
| 2位 | ドイツ | 3366.77 |
| 3位 | IMF(国際通貨基金) | 2814.04 |
4位以下は、イタリア、フランス、ロシア、中国、スイス、日本、インドの順です。
各国の中央銀行が金の購入をしている主な理由は外貨準備の多様化、経済・地政学リスクへの備え、インフレと通貨価値低下への対策、国際的な地位と信頼性の向上などです。
5. 今後の見通し
現在、多くの投資家が「今後金相場はどうなるのだろうか?」と日々考えていることでしょう。
結論として、今後の金相場の見通しは上昇すると予想されます。
その最大の根拠は、金相場を支える要因が、一過性のものではなく、長期的な要因だからです。
主に次の3点が今後も金相場が上昇するであろう理由です。
5-1. トランプ政権の政策
1つ目の理由はトランプ政権の政策です。
特に注目すべきは、低金利政策への志向です。
トランプ大統領は、景気浮揚のためアメリカ中央銀行(FRB)に継続的に利下げを求めており、日本並みの低金利(0.5%)を目指していると公言しています。
現在のFRBの政策金利は4.25%から4.5%の幅です。
金利が下がると、利子を生む資産の魅力が薄れる一方、利子を生まない金への買い圧力は高まります。
現在のFRB議長であるパウエル氏(金利維持派)の任期は2026年5月までですが、トランプ大統領は2025年10月か11月にも後任(低金利派)を指名すると示唆しています。
後任が低金利を推進する人物になれば、金相場は一気に強い上昇トレンドに入ることでしょう。
また、トランプ大統領が進める大型減税やインフラ投資は、財政赤字の拡大につながり、米ドルの価値低下やインフレ懸念を高めます。
すると金への需要が増加するため、金相場はさらに買いに傾くことでしょう。
これらのことから、基本的にトランプ大統領の在任中は、金相場は全体的に強い買い圧力に傾き続けることが予想されます。
5-2. 米中対立の激化
2つ目の理由は米中対立の激化です。
米中対立が激化すると、中国は外貨準備金を米ドルから金へと移行させる可能性が高まります。
現在、中国は世界最大の外貨準備高(2025年5月末時点で3兆2,853億ドル)を保有していますが、その6割以上がドル建て資産です。
しかし、米中対立(貿易戦争、制裁、地政学的緊張など)が激しくなると、ドル建て資産の凍結リスクや価値下落リスクが高まります。
このリスクを避けるため、中国は戦略的に資産の多様化を進めていると見られています。
そのため金は「安全資産」として、ドルへの依存を減らす手段として選ばれているようです。
事実、中国人民銀行は近年、金の保有量を着実に増やしており、過去3年間で外貨準備に占める金の比率は2倍になりました。
米中対立が今後も激化すれば、この傾向はさらに加速し、金相場は大きく買いに傾くことが予想されます。
5-3. 各国中央銀行の旺盛な金の購入
3つ目の理由は各国中央銀行の旺盛な金の購入です。
金は「安全な資産」と呼ばれ、戦争や経済危機の時でも価値が落ちにくい資産です。
そのため、2022年のロシアのウクライナ侵攻でロシアのドル資産が凍結された事件以来、ドルに頼りすぎるリスクを避けるため、金を買う国が増えました。
特に自国の経済が不安定な新興国の多くは、インフレ(物価上昇)や通貨安(自国のお金の価値が下がる)が起こりやすい経済環境です。
よって現在ロシアや中国と関係が近い国はドル資産の凍結リスクや価値下落リスクを警戒して急激に金を購入している状況です。
このまま各国中央銀行の旺盛な金の購入が続くと、金相場は大きく買いに傾くことが予想されます。
6. まとめ
今回は、金相場の高騰はいつまで続く・直近10年間の推移から今後の見通しについて解説しました。
直近10年間の金相場の推移を見ると、世界の経済や情勢が不安定になるたびに金価格が上昇してきたことが明らかです。
このことから、金は「有事の安全資産」としての役割を今後さらに強めていくことが予想されます。
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